11月22日の話。
一般的に、11月22日はいい夫婦の日、と言われてますが、わたしたちにとっては「わんわんにゃんにゃんの日」であり、犬が好きなあなたと、猫が好きなわたしがこれから仲良く一緒にいられますようにと一年前に願った、お付き合いを始めた記念日です。
今日はこんな、書いている側どころか読者になってくださる予定の皆様さえも恥ずかしくなってしまう話、しかしません。
一年の節目として、ここに赤裸々に記録しておきたいのです。
よろしければどうぞお読みください。
彼はバイト先の先輩でした。
バイトリーダーだった彼は、生徒からも講師からも塾長からも慕われる、よく働く賢く正しい人間でした。
恋愛感情は皆無でした。
意識したことすらありませんでした。
意識するようになる前にまず、わたし達にはお互いに付き合っている人がいました。
遠距離恋愛に疲れたわたしは、確かに、いつも、新しい、出会いを探し求めていました。
彼もきっとそうでした。
わたしたちは故意に過ちを選び、そして故意に悩みました。
悩んだふりして楽しみました。
刺激的な毎日を、リアリティのない、夢か現実かわからなくなる瞬間を、毎日楽しみました。
秋の季節はすぐに過ぎました。
わたしが頭を抱えて悩んだポーズに慣れてきた頃、彼が答えをくれました。
わたしは応えをあげました。
わたしたちはせっかくなのでいい夫婦を目指しました。
でもあからさまで恥ずかしいので、わんわんにゃんにゃんだと誤魔化しました。
余計に恥ずかしくなってますが。
彼はわたしにはない正しさを持った人間でした。
彼の発言はいつも正解で、選択は適切で、人を魅了する説得力を持ち合わせた人間でした。
そこにわたしはまず惹かれました。
彼が笑う時、わたしも笑いました。
泣く時はわたしも泣きました。
感情が揺れるポイントが、揺れ幅が似ていることに気がついたのはすぐでした。
彼は頑張り屋でした。
いつも誰かのために動いてました。
塾では生徒のことを一番に考え、生徒の成績を伸ばすために、テストの点を上げるために、志望校へ合格させるために、誰よりも一生懸命に働いてました。
休憩時間も質問が殺到する、みんなに愛される先生でした。
彼のバイトリーダーの外面は完璧でした。
わたししか知らない内面はわたしにしか見せられないようでした。
外での緊張をわたしは褒めてほどきました。
そして内での安心を一人で約束しました。
彼の癒しになれるように日々努めました。
一人暮らしの彼の家に週6日居候しました。
わたしの両親はわたしたち二人の関係を認めているのかいないのか、毎月2万円の生活費をわたしにくれました。
それ以上は働いて何とかしました。
週に何度かは夜ご飯を作って彼の帰りを待ちました。
いつでしたか、自宅の庭でのBBQに彼を呼び、無理やりやんわり挨拶に持っていきました。
わたしのアドバイスを素直に聞いて、プレミアムモルツを持って来た彼は父に気に入られ、頑張って飲めないお酒を飲んでリビングのソファて寝てしまい、後から反省するのでした。
わたしの愛犬トムが彼の味方で、彼はBBQのお肉を何枚かあげたので1日でトムと仲良くなれました。
彼の実家は大阪にあり、わたしは3度お家へ伺いました。
ご両親とも優しく接してくれましたが、なかなか思うように上手くお話出来ないのはわたしが不器用で経験不足だからでした。
よくある嫁姑問題みたいな関係を避けたい、と考えるほどどう接していいのかわからなくなりました。
彼の愛犬のトイプードルの桜とメイがわたしの味方をしてくれました。
何を話して良いのかわからず、何が出来るのか検討もつかず、2匹の後を追って過ごしました。
またおいで、とは言われませんでしたが、また来るのだろうな、とは思っていただけた気がしました。
1年間で二人で色んな場所にデートに行きました。
奈良へ紅葉と鹿を見に行きました。
横断歩道で青信号を待つ行儀の良い鹿を遠くから眺めて笑ってました。
真夜中の駅のロータリーで雪合戦をしました。
結果はきっと引き分けでした。
草津川の堤防へ、スタバの紅茶とケーキのテイクアウトを持って、桜を見に行きました。
堤防の上の鉄棒で、いかにパンチラせずに逆上がりをするかについて話しました。
BIGBANGのライブに4回行きました。
BIGBANGは彼から教えてもらったものの一つでしたが、今ではわたしの方が上手にカラオケで歌えるようになりました。
阪神タイガースの応援も、ガンバ大阪の応援も、彼から教わりました。
ガンバにははまりませんでしたが、阪神の選手の名前は嫌でも少しずつ覚えました。
近所のカフェへは10回以上行きました。
あの遠くのスタバへもきっと10回ぐらい行きました。
彼は少しごねて、文句を言ってみて、それでもわたしのスタバ通いに付き合ってくれるのでした。
あのスタバへは30分ほど歩かなくてはいけませんが、彼は1年で3キロ太りました。
喧嘩もしました。
二人して口をきかずに1時間近く、3mの間隔を保って帰り道を歩いたことがありました。
帰ってからすぐ泣いて困らせ、お互いに謝るしかないのでした。
喧嘩の内容よりも、喧嘩していたほんの少しの時間のことをお互いに謝りました。
東京に旅行に行きました。
嫌がる彼をディズニーシーのジェットコースターに乗せました。
普段見られない怖がる彼は新鮮でした。
スペースマウンテンには2回乗りました。
彼はもう慣れたようでした。
それから東京ドームのBIGBANGのジヨンのコンサートで騒ぎました。
興奮冷めず疲れ果ててホテルで爆睡し、次の日の予定が一つ削られました。
彼はディズニーランドを十分気に入って、帰ってから家でもミッキーのTシャツとズボンを楽しんでいるのでした。
卒業旅行は海外のディズニーランドに行く、と言い張り、折れず、どうやら決定されてしまったようでした。
旅行費の心配をしつつも、わたしは彼と一緒ならどこでも楽しいと答えました。
意外にも彼は猫カフェへ行くのを嫌がりませんでした。
1年間で特典のポスターが何枚も溜まり、ポイントカードは2枚目に突入しました。
彼は自分の推し猫を見つけ、推し猫とのツーショットをLINEのアイコンにしたのでした。
彼の猫派への転向も夢じゃないと思いましたが実際はこれにはかなり時間がかかりそうです。
というか一生無理だと思います。
桜とメイのことが世界で一番大好きだという目をしていますから。
わたしは彼の一番を諦めていますとも。
先日アルバムを作りました。
1年間にわたしが撮った、その中で抜粋した、80カットの彼の表情を、仕草を、挟み込んで仕舞いました。
わたしが彼を大好きなことは一目瞭然でした。
わたしは何度も見返して、スペアが欲しくなり、でも唯一は大切だから、我慢しました。
我ながら良い出来でした。
待ち焦がれた記念日にやっと渡して、わたしは彼の涙を見ました。
恥ずかしそうに、帰ってから見るんだった、と言って後悔してくれました。
わたしも嬉しくてなぜか泣きました。
予想しなかった、わたしの自己満足が彼の満足に繋がった瞬間を、わたしは忘れたくないのでした。
1年間ありがとうとは面と向かって言えませんでした。
世の中には、恋人なんて必要ない、一生結婚しないつもり、と言う人がいることも知っていますが、わたしは全くそうは思いません。
パートナーは人生を輝かせてくれます。
いつも、輝きをくれます。
わたしも彼にできる限りのことをしたいといつも考えています。
これからのことは誰にもわかりませんが、彼と一緒なら、きっと今年1年も、アルバムに思い出が収まりきらない程、充実したものになると信じています。
少なくとも彼が猫派に生まれ変わるまでは傍に引っ付いて離れないつもりです。